原罪

「私、死のうと思っていて」
「理由はないんです。ありすぎて、ないのと同じになるぐらい」
「学舎から帰る途中、いつも同じ時間ですから、いつも同じ光景が見えるんですけど」
「空が、綺麗で」
「夜と朝の境を見たことがありますか?違いはないんです」
「赤と青が同じ色であることは絶対に有り得ないのに、その境には無数の色が光って見えるんです」
「ああ、生まれる、ってこういうことなんだ、って」

ローブは被っていたフードを取って、微笑んだ。

「私、両親にサフィレットという名前を付けられました。
混ぜガラスのことです。
鉱毒があるし、もう誰も作り方を知りません。角度によって色変わりして、
その様が珍しくはあるのですが、価値のある石ではないんです。
私は私が何をするべきか、
自分の名前を知った時、分かった気がしました。
ああ、きっと、両親も同じものに心を奪われたんだ、って」

「あなたの僕としてお答えします、ドクター。
私は世界が愛おしかった。死も、生も、ありのままであるべきです。
人間が滅んでも、カーマインは生き続けるでしょう。望みのままにです」

「驕っていたんです。神の愛を人に教えられる、と思ったんです。
カーマインが国を焼き尽くしたとしても、彼は、人を愛しているだけだと言うでしょう。
私は、罪が何か、分かっていたのに」

「どうか、お願いします。あの子を死なせないで」

投稿者

神奈川県

コメント

  1. 絶望するための絶望ではなくして、希望の萌え出す丘に絶望する、光は永遠に光であるのだろうか? 実はそこには、神の栄光が絶望するのだと、いくらかの〈ガラス〉の溶融する温度で、わたし自身のてのひらを〈焼く〉のである、色? わが眼球をとりだして。

  2. @坂本達雄
    むしろ「ローブ」が何故世界を作れたのかに話が逸れている気がしますね。作らんでええねん、もうあるんやから。幼心に罪が何かを分かっていたことさえ、もう思い出せない彼女には、戦死するカーマインの姿が見えているのだと思います。

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