神懸かりの一分

僕にはもともと「不幸」という属性がある
運の無さではない
見えないものが見えるようになる力
予感がすることはある
だけどそこから逃げてはいけないことも分かる

母に置き去りにされるのはいつものことだった
また金の問題だ
子供を育てているのもいつか金を回収しなかったら
社会的な信用を落とすこと
それぐらいは分かっている

ブランコに乗って遊んでいるように見えたと思う
本当はあいつの背中を眺めていた
ブランコを高く漕ぎながら
保育園の入り口を通ろうとして保育士に制止されるあいつ
こっちに来るだろうと思った

薄曇りの灰色の空が広がっていた
予想通り公園の方へ回り込んで声を掛けてきたので
口も開かずにただ指を差した
人気のないマンションの方へ誘導するために
あいつは始終口を開いて、つまり「私とヤリタイ」と言っていた

幾つだったと思う
私がしっかり覚えているのは
その時保育園の中にあいつを入れなかったのが担任だったのを知っているからだ
でもあいつの顔が思い出せない
何を喋っていたかだけが分かる

その後のことはさほど問題じゃないので割愛する
そいつは事を終えたら
「ここで待ってて」と言って去っていった
騙されたことに気が付くまで
五秒掛からなかったよ

人を疑ってかかっている訳じゃない
信じられないだけだ
最近覚えた仕事でそれがよく分かってきた
何を言いたいかというと
つまりそういうことが世の中にはあるんだ

僕にはもともと「不幸」という資質がある
明日なんとかなるだろうと思うことが出来ない
誰かがやるだろうと思っている間に手遅れになることもある
そして目の前で起きた救いようのない出来事を
救わないでいることができない

当たり前の話ばかりだ
人はそれを慈しむと言ったりもする
話が通じないのでなかなか話題にもならないけれど
弱いものを守ろうとする心の働きだ
簡単に言うよね、まるで僕は小さいお父さんみたいだって誰かが言った

さっき飲んだ頓服が効いていて
部長の付けたあだ名が気に入っているんだ
電子上に全てが保存されていく
全てが僕の考えている理想の世界に近づいていく
道筋を作ってくれたのも確かに父だと思う

ここはまるで僕を弔うための祭事場
雑貨達が参拝者の悲しみを慰める
あなたのことが嫌いにならなくてよかった
そのことは神に感謝してもいい
死ぬまでの残り時間に対して人は金を払いそして使う

飲み屋でしか真実を話そうとしない皆へ
情報を制限することで人を支配しようとする皆へ
仲間意識だけで人を殺す皆へ
世界を世界と呼ぶことも古臭くなってきたところで
たまには地面を這っている蟻のことも考えてくれないか

そんな詩があってもいい
僕のログはこの世界に全て残っているだろう
誰にも見られないとしても
僕はまた生まれてくる
その時にまたあなたと友達になれるといいのだけど

そうそう、
その時の僕があいつに欲しいものをたくさん聞かれたのだけど
どれも全部間違ってたし
いらないものだった
僕が見たかったのは「精子」だ

投稿者

神奈川県

コメント

  1. 言葉が感じられるものとなる為には、言葉はいくつかの土塁を越えて来たのだと思う、この土塁のうえで膝に土をこすりつけたのである、また、てのひらにも土はこびりついたであろう、しかし口には言葉をためている、唇までも砂で汚れても、言葉は土塁を越えて来たのだと思う。つまり詩に於ける美は膝の泥をはらいてのひらをたたき唇をぬぐって、そして口内の言葉に発火させるのである。

  2. @坂本達雄
    保育園の絵本を背表紙を眺めながら、字が読める!と思って大喜びした瞬間も覚えているし、この頃なので、恐らくこの「僕」は、世界を本のように読むことができるのです。問題なのは、読めて書き表せても理解できないため、自分が何をしているのか全く分からない点で、彼女なども、駄作から字を覚え、私を利用しながら黙っていました。情報に金が必要になった時代、あまり書き散らかすと怒られるのかな、などとも思います。

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