タイダイミー
手紙を読むというのは声を聞くのとはわけが違う
ドラマみたいに書き手の声が読まれていくわけではない
いつも自分の声でしか聞こえないものだ
ヴァイブレーションが一定なのは読み手に責任がある
どんな蜘蛛も一歩踏み間違えば
自分の蜘蛛の巣に引っ掛かってしまう
めずらしくそんなことにも飽き飽きしてしまったから
80年代くらいの派手な大きなラジカセを四方八方幾重にも重ねて置いて
あらゆるジャンルの音楽を同時に鳴らそうと思う
一緒に真ん中座らないか もちろんイマジネーションでいい
もう一度相対してしまうなら
あの時の
震えたフェイクな笑みも
今度こそ完全なリアルに変わるだろう
大丈夫 理由はない
安心していい 約束だってする
銃弾は既に打ち込んである
だけど本革のパンツは予想よりも重くて不自由だ
コーティングしているから
手のひらでも溶けないんだけど
やけっぱちの浪費で買った屈折望遠鏡
トリガーを引くのはおれでもおまえでもない
何か知らぬ間に引かれることになるんだろう
その指をファックしよう
その髪をファックしよう
豆電球のおれが真っ暗にしているのは
もうすぐ空が白んでくるのがわかっているからだ
少しずつ時間をずらして時計をいくつか持っていたら
本当の時間がわからなくなってしまった
絶対時間を体に持つ
気付いただけの衝動
一定のキョリが互いを惑星のようにする
傷つかない朝
まどろみもない昼
狂うことのない夜
餓死寸前の満腹
突然ファックしよう
無意識のうちにファックしよう
最悪のタイミングでファックしよう
それにしても初めてのポジなのにどうしてスライドなんかにしてしまったんだろう
回転ランプの傘にすればどれだけキレイに映えただろう
三つのボックスに入りきらなくなってあとはそのまま散らかしている
どうせおれもおまえと同じように
自分の毒が体にまわって
そのままイッてしまうんだろう
嘘みたいな収入 殴りつけたいような公園
ヴァニラの匂いはもう今ではなんだか胸が悪くなる
とりあえず今はそんなところで
回線につないでファックしよう
お互い離れてファックしよう
消耗しない一日
のど笛が鳴りそうな咳 痰はからんでないんだけど
押しても引いても摩耗して動かない蝶番の重たい扉
ネガを返してくれないか
もっと焼き増しをしなきゃならない
部屋が真っ赤に燃えているんだって
そんな勘違いで正気の淵から飛び降りようなんて
ただの勘違いじゃないか 顔を洗えよ
だからナチュラルじゃないものはダメだって
あれだけ言っておいたのに そのままでもいいからそのかわりに
ファックが済んだらその足で
おれを七色にタイダイしてくれ
どんなに混乱を装ってもその中では既に密かに答えを知っている
ちょっとだけ生では食えない牡蠣みたいな匂いを出してる
西洋的なコード進行が白人の男根主義にオーバーラップして
美しい旋律が裏返って見える
あれもこれも裏返って見える
インサイドアウトアップサイドダウン
それもファッションそんなことも今ではファッション
Aの耳鳴りは音叉のせいだと思う テルミンでかき回してしまう
重力がなくなれば吐息だけで体が回りだして止まらない
言葉だけでファックしよう
無言でファックしよう
目も耳もふさいでファックしよう
ファックしないことをファックしよう
何が起こっても最後には面倒でも丹念に
おれを七色にタイダイしてくれ
やっぱり体調を壊してしまった
炬燵をつけながら電子レンジとドライヤーを一気に使ったような
コミュニケーションブレイクダウン それは伝えなくてもいい
最後の言葉は後にも先にもどこにもないんだ いつも
コメント
この詩は全体に混乱と閉塞をまとっている。あとROCK。
ここでは何もかもが思い通りにいかない(Fuckだってしてぅれるかどうか。。)
不平不満はとうに諦念の域だ。
それでもFuckの願望だけはおさまらないようだ。
西洋的なコードがもしスリーコードなら、僕には黒人の男根(弾痕?)が浮かぶ(いや浮かびたくないな)
タイダイとはTie dyeだろうか。Tie die?
あぁ誤字じゃん(涙) ぅれる⇒くれる
王さん、混乱と閉塞でロックしてファックする(しない)詩でまったくその通りですね。
人生のいろんな断面をいろんな表現で提示できていれば本望です。
ヒップホップを聴いているような感覚がありました。ビートとうねり。読むというより、リズムに乗っかるような…。
長谷川さん、たしかにおっしゃるとおり、読むというか、リーディングするならどんなスタイルになるかを意識しながら書いていた時期のものではあります。