渡り鳥

言葉がなくなるのが一番良いのに
なくならないから溢れる

溢れるのに濡らさないから
眠っているのに目を覚まさない

木の根、
小さな神社で
古い雨宿り
いつまでたっても

ぱしゃぱしゃ
水たまりは裸足、
浅さを好んで棲む
雨の日のこんな眩しさ、

人間は呆けた渡り鳥だ
どこかへ出かけてもまた戻ってくる
戻ってきたらまたそこらをうろついて
うろついてまた帰っていく

帰っていくけど
呆けているから
ちゃんとしたところには帰っていかない

渡り鳥なのだけど
はぐれるのは仕方ないのだけれど
渡り鳥と違って人は
羽ばたくことの美しさを
どうして自覚してしまうのだろう

小さな公衆電話と
視界の端で
煙るようにくすんだ
朱い傘

投稿者

埼玉県

コメント

  1. わーなんだかすごく心に沁みる素敵な詩でした。「溢れるのに濡らさないから、眠っているのに目を覚まさない」最初からものすごく深いですね。
    自由に動き回っている渡り鳥の、空間の使い方が広い表現から、目線を一気に落として、実際は灰色の雨のなかで小さな公衆電話の中、誘目色の赤い傘がもっと小さく痛々しく傷跡のように残る。絵のようだけれど、感情も色濃くて、まさに詩でなければ表現のできないイメージだと感じました。

  2. @ザイチ
    ありがとうございます

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