葛の葉
葛の葉は、湿つている
この夏を塗り替える今朝方の雨で
脆弱となつた蔓は、しなを作り
陽の射す陰部を絡めとろうと
籾殻のばら撒かれた川面や
比人介護士の白い歯や
国鉄色の作業服や
野球場の静寂や
思ひ出や
風や
葛の葉は、揺れている
葛の葉は、揺らいでいる
葛の葉は、揺らされている
いつしかその湿り気は
陽に吸われていた
葛の葉は、湿つている
この夏を塗り替える今朝方の雨で
脆弱となつた蔓は、しなを作り
陽の射す陰部を絡めとろうと
籾殻のばら撒かれた川面や
比人介護士の白い歯や
国鉄色の作業服や
野球場の静寂や
思ひ出や
風や
葛の葉は、揺れている
葛の葉は、揺らいでいる
葛の葉は、揺らされている
いつしかその湿り気は
陽に吸われていた
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コメント
これが強迫性障害のNが最後に書いたと言われる叙情詩、いや叙景詩、いやこれは美しすぎてもう詩ではない。この言葉のチョイスに魅了されてからもう20年以上も経ったか。
一読しただけでは読めない詩であるしそれが詩だからとても詩らしい詩である。しかしもちろん葛の葉見たことで昔を思い出す単なる郷愁の詩、ではない。例えば葛の葉の形は小陰唇を表している。それは陰部というヒントから明らかである。また葛は屑と同じ読みであるから自虐的な思いも感じさせる。そのような視点でもう一度この詩を読むと味わい深い。
嗚呼これはすごい(上手に言語化できずコメント控えてましたが)と思って何度か戻って来て読ませて頂きました。
コメント欄で私の知らない旧ぽえ会の雰囲気も味わうことができて何だか嬉しいです。
モチーフ、アプローチ、対比、始まりから終わり方まで堪能させて頂きました。。