カルマ、初夏

養護学校出身のひとらと
玉葱の皮を剥いてゐた。

剥いても剥いても
こまくならぬので
癪が起きさうになつたが
ピカリの獨り言が
やわらかな触りだつたので
抑えが効いたよう

私の事を猿手で指して
せんせえ、と呼ぶので
私はすこしむきになつて
せんせえ、ではないんだよう
ピカリが大事さうに
化け物の絵を見せてくれて
驚いた振りをしてあげた。

各各の世界を
私は私の世界を
剥く。

ふしあわせのかたち
ふしぜんなことわり

故郷の空は
今日も
透けきつて明るいよう

投稿者

山口県

コメント

  1. 微笑ましさと、同じ分量の不穏さがあって、それが「ふしあわせ」と「ふしぜん」の正体かなあと思いました。

  2. 1連目と4連目はそれぞれが独立した趣のある句に成り得ますね。

  3. 「ふしあわせのかたち
    ふしぜんなことわり」
    このフレーズがある限り、この詩を読み終えた後でも、自分が接する世界がこの詩に包含されていくようです。

  4. ギギギのところが特に好きな感じでした。

  5. すごくいいです。養護学校の学祭で演奏したことを思い出して泣けました。

コメントするためには、 ログイン してください。