Female Spider Ⅴ
アタシって
中古マンションの角部屋で
妙に片づき過ぎたベランダに居着いている
蜘蛛女
横隣ニ軒と真下でも、独居の洗濯物がひっそり
干されているわ
子供たちが巣離れした「家」にとって
奥さんの存在は大きいのね
アタシって自由業で暇というわけじゃないけれど
一筆書いてみたわ
『あさがおの観察日記』
それは自治会の一斉清掃の時
お母さんと一緒に参加していた女の子が
公園で 花壇の雑草と間違えて
引き抜いてしまった
大きな双葉
プランター菜園もガーデニングも続かなくなって
やめてしまう住人のノンちゃんは
それを大切に持ち帰ったのよ
根っこが半分ちぎれている双葉は本葉を生やし
細い蔓も伸び始めると何色だか分からない
小さな蕾をつけたの
そして一輪、二輪
うす紫色した可憐な花びらが開き
楽しませてくれたわ
花壇にあったなら大輪の花を沢山つけたでしょう
けれども
ありのままの境遇で精一杯生きた朝顔は
小粒すぎて、とても芽の出ない種を残したのよ
感想文も添えて仕上げた観察日記
誰も読んでくれないから
アタシの ひと夏の思い出にするわ
コメント
切り取られた日常に風情を感じました。
@あまね/saku
様へ
読んでいただいてコメントをくださり、嬉しいです。
どうもありがとうございます!
この「蜘蛛女」シリーズは、自分でも気に入って書いているので、
またネタを探して続けていこうと思っています。^ ^
蜘蛛女の目線で描かれた詩
隣人のベランダにひっそり干された洗濯物
独居、子どもも巣立ち奥さんもいない(亡くなった?出ていった?)
仕事を引退した男の人が、慣れない家事をしているのでしょうか
蜘蛛女には毒があるかと読み進めていくと
どうやら毒ではなく、悲しい過去がありそうな
朝顔を自身に見立てて観察日記として描いたんじゃないだろうか
蜘蛛女は子どもの産めない躰で
だから近所の子どもを見るたび
人知れず心を痛めていたのじゃないか
色々と想像が膨らみました
@雨音陽炎
様へ
ん……鋭い、洞察力と創造性豊かで優れた読解力ですね!そんなふうに
読んでいただけて、大変嬉しいです。^ ^ どうもありがとうございます!
詩は、常に感覚的に心の感じるがままに描いているので。時に自分では
作品をあまり分かっていない感もあります。…(笑)
だから読んでくださいます人達から、いただけるご感想はとても貴重なのです。