くすんだ画板

誰かによって何かが描かれた
その何かを知っているのは、
その画板と、その人だけ

美しい戦場だっただろうか
悲惨な宝石だっただろうか

幾度も塗り重ねられ、幾度も評価され

それに耐えきった画板は
いつしか、灰色にくすみ
元の謙虚な白色は、どこにも見当たらない

まるで、灰色に淀んだ曇天のように

今までに何人が、この画板に描かれたものに
その心を傷つけられ、助けてもらっただろう

きっと、この画板は
傷つけることも、助けることもしたくなかっただろう

あるがまま、そのままで
描かれることを、幸せとしていただろう

今は誰も、筆を持たず
ただ、そこに横たわる画板を
灰色に汚れた指で、触れるだけだった

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