しらが

杖を使って小刻みに歩くのは
背中に満月を乗せた爺さんです
この町の入れ歯が一斉に
歯磨きをはじめます

ご近所の赤ちゃんたちが
染色体について議論して
オムツが限界を超えるころ
涙は井戸へ帰っていきます

恋人たちが 内緒話をして
汗をたくさんかいたあとに
水蒸気が 製糸場へ送られて
がちゃがちゃ大きな音を立てます

中年か初老かという夫婦は
そんな幻燈を浮かばせながら
思い出を補い合って
バームクーヘンを切るのです

投稿者

北海道

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