雉も鳴かずば撃たれまい(新釈ことわざ辞典その2)
秋に扇なんて 風流でも気取ってるつもりなの
夏の名残を惜しみたい気持ちはわかるけど
そんな手扇の風なんかよりも
この心地いい秋風を
もっと素直に受け入れたらどう?
雲泥の差ってさ
いまだったらコンプラ的に絶対アウトよね
あの空をプカプカと浮かんで 呑気そうに泳いでる雲と
ぬかるんで滑って転げてしまいそうで
汚れたらちょっとやそっとや落ちそうにない泥
比べようのない両者を 何故に無理くり比べては
優劣をつけようとするのかしらね
あの呑気そうな雲だって 時には怒り狂って悪さもするし
扱いが厄介そうな泥にだって きれいな花が咲いたりもする
いいとこもあれば悪いとこもある お互いさまよ
つまるところそれが 多様性っていうものなんじゃないかしら
鵜の真似をする烏って嘲笑するけれど
泳いでみたい烏がいたっていいじゃないの
溺れることがわかってて
それでも水の中に入ってみたかった
わかってるよ どんなにあこがれたって鵜にはなれないことくらい
烏は所詮ひとに嫌われるゴミ荒らしの烏
だけど 憧れる気持ちくらい許してくれたっていいじゃない
たとえ身の程知らずと嘲り罵られようとも
鴨が葱背負ってやってくるわけないじゃないの
そんなことしたら鍋にして食べられちゃうのよ
食べられる気満々で 近づいてくるような奴がいると思う?
何でわざわざそんな危険を冒すような真似をするっていうのよ
腐っても鯛なんていうけど
それってただいつまでたってもプライドを捨てられない
見栄っ張りのコンコンチキなだけでしょ
だって腐ってるのよ もう食べられないのよ
いくら高級食材だからといってちやほやしすぎなんじゃないかしら
飼い犬に手を噛まれたからって
そんな烈火のごとく怒ることじゃないじゃないの
少し冷静になって考えてみるといいわ
あなたが先に なにかしてる可能性だってあるのだから
地獄に仏っていうけど
毎日が辛くてしんどくてたまんなくて
もうどうしていいのかわからないそんなときに
ふとやさしくされたら
誰だって仏のように見えてくるに違いないと思うのよ
でも 気をつけたほうがいい
自分が弱っているときほど つけこんでくる人間もひとりや二人じゃないでしょう
これこそまさに地獄に仏っていうものなんじゃないかしら
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
袈裟が憎けりゃ数珠まで憎い
数珠も憎けりゃ足袋まで憎い
足袋が憎けりゃ
連鎖する 連鎖する
遠くの寺から鳴る 鐘の音
行きはよいよい 帰りはこわい
とおりゃんせ とおりゃんせ
善は急げ 急げ急げ
急いで走れ 突っ走れ
堪忍袋の緒が切れました
ブチっという鈍い音が たしかに聞こえました
ブチキレるとはつまり そういう意味だったのです
どんなに煮え湯を飲まされても
喉元すぎれば熱さも忘れてしまう
だけど 煮え湯を飲まされた事実は消えないわ
火傷した喉が ヒリヒリと
爛れた皮膚が 剥がれて落ちる
あたしの中の 大切だった何かが
剥がれて落ちる
残り物に福があったためしはあって?
売れ残りのバーゲン品にいいものがあったためしがあるかしら
おいしいところは全部先に持ってっちゃって
残り物に福とは凄まじい
引かれ者でも強がりくらい言ったっていいでしょ
小唄のひとつも歌えなくなってしまったらお終いよ
それに こんなの平気へっちゃらって思ってでもいなけりゃ
とてもやってられやしないじゃないの
溺れるものは藁をも掴む
そんな頼りないものでさえも頼りにしてしまう
まさか自分がそうなるなんて思ってもみないけど
でも 追い詰められたら
人間 何をするかわかったものじゃないわね
必死になっちゃうのね
おかしいわね おかしいわね
あれほど死にたがりだったくせしてさ
枯れ木も山の賑わい
あれは木が枯れているわけじゃなくて
葉が枯れ落ちて 枝がむき出しになってるだけですから
失礼なことは言わないでいただきたい
井の中の蛙、大海を知らず
一歩外に出る勇気もないくせに
家の中じゃ 大威張り
まるで王様かなにかでもなったつもりで
一生その井戸の中にいたらいいわ
そこはとても安全で居心地がいいんだろうから
へそが茶を沸かすところを
一度でいいから見てみたい
そんなくだらない空想にふけっては
今夜も午前様です
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最後までお読みいただき、ありがとうございます
またも懲りずに、ことわざに物申すの第二弾です
お目汚し、失礼いたしました
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