墓滅入り

丁度五年前、
夜勤明けの其の足で
中原さんの墓を見に行つた。

吉敷川の
干上がつた川底に、
小石小石小石小石小石小石小石小石小石小石
小石小石小石小石小石小石小石小石小石小石
小石小石小石小石小石小石小石小石小石小石
小石小石小石小石小石小石小石小石小石小石
を、掻き分けて、辿り着く、
住宅地の禿げた一画に
中原さんの墓は在り
その石肌はなめくじのやうに
てらてらと青白く光つていた
花筒はとうに涸れているし
其処で、
私が好きな花を巧く答えたとて
きつと舌打ちするのでせう

旧小郡驛方面から
観光機関車の汽笛
幽かに、、、

中原さんの墓は在るだけで
あのひとつのものは
解らなかつた

私が失職する前の
他愛の無い出来事である。

投稿者

山口県

コメント

  1. 中原さんが中原中也のことだとはすぐに分かりました。調べてみると出てくる地名が山口県のものだからです。もちろん三明さんにゆかりの地であることは言うまでもないでせう。失職する前に何か苦悩があり、しかしそれは今から思えば他愛のない出来事だったのかもしれませんが、中也の墓を見に行くことで何か得るものがあるかもと出かけた、それは小石を掻き分けるという表現から必ずしもうきうきとした気分ではないのですが、とにかくたどり着いてみると、まあやはりというか墓はただそこに在るだけで、何も語ってくれなかった。と、そんな風に読みました。この詩から醸し出される不思議な悲哀がなぜか初秋の風のように感じました。

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