ただ、一切は過ぎてゆきます
いつの間にか ひとりで街を歩けるようになりました
いつの間にか ひとりで喫茶店に入れるようにもなりました
いつの間にか あなたの声を思い出さなくなって
いつの間にか あなたを想って泣くこともなくなりました
あなたがいない世界なんて
あの頃は想像もできなかったし
あなたなしで生きるなんて考えもしなかったけれど
案外平気に生きています
きっとあなたも同じなのでしょうね
私がいなくても あなたはあなたを生きている
いいえ きっとあなたは最初から
私なんかいなくても生きていけたでしょうけど
生きるってことは
ただそれだけで大変ですね
息を吸って吐いて寝て起きて働いて
ぎゅうぎゅう詰めの電車の中
逃れられない日々に守りたい自分などどこにありましょう
ただひとつ 言葉が足りなかったばかりに
ただひとつ 言葉が余計すぎたばかりに
壊さないように壊れないように
大事に大事に守ってきたはずのことでさえ
いともたやすく粉々に
脆いものですね 儚いものですね人間の心なんて
今まで一体どれだけの言葉を交わし合ってきたのでしょう
あなたはそれでも 自分の言葉にだけは決して嘘をつかない
人のせいにしたり 責めたりしない
そういう人だと思っていましたが
どうやらそれは 私の思い違いだったようです
あなたも所詮 そこらの人間と大差ない
ただのズルイ大人だったのですね
痛みを知っているから 優しくなれるんじゃない
優しくしてほしいから ただ優しくするだけ
ただちやほやされていたいから
みんなにいい顔してみせているだけ
本当のことを云われたら もう知らないあっち行け
軽く見てくる人間なんか放っておけばいいよ
誰が悲しまなくても 自分が悲しむよ
だけど結局はあなたも
私のことは軽く扱ってもいいと思っていたわけですものね
つくづく身に沁みてよく解りました
どうせ所詮は赤の他人だもの
あなたには少しばかり 私自身のことを話しすぎたかもしれません
誰が解ってくれなくても あなたならきっと理解してくれる
そう思っていました
だって あなたもずっとひどい人生を送ってきた人だったから
人に期待して 期待しては裏切られ
自分が好きでも 相手もそうとは限らないということ
いつだって 去られていってしまっては
淋しさばかりを置いていかれていた人だったから
だから 自分が痛いのと同じように
他人も痛いことを 解ってくれる
解ろうとしてくれる人だろうと
だけども あなたが理解したいと思っていたのは
大事にしたいと 守りたいと思っていたのは
他の誰でもない 愚かな自分ただそれだけだったのですものね
けれど ならばせめて自分の云った言葉にだけは。。。。。。
やめましょう
云えば云うだけ 虚しくなるばかりです
あなたは あなたのまま
あの頃と何にも変わらない
比喩や云いまわしが違うだけの
詩を描き続けていったらいいと思います
なぜか昔から あなたにはファンがつきませんでしたもんね
いいんじゃないんですか それならそれで
私は私で 私の描きたい詩を描いていくつもりです
少なくとも 私は私の描いたものたちには
誠意と責任を持って 大切にしていきたいと思っています
そうでなきゃ 何の意味もなくなってしまうから
描いたものたちが 言葉たちが可哀想だから
今年の夏の暑さはちょっと異常すぎますね
近くのコンビニ行くだけでも 躰中の水分が奪われていくよう
8月の空は気分屋だから さっきまで土砂降り雨だったのに
なにもなかったみたいに 白々しいくらいの青
あなたはこの空をどこかで見ているでしょうか
たぶん見てはいないでしょうね
いまごろはきっと くしゃみを4回していることでしょう
それは風邪ではありません
風の便りです
長々と話してしまいました
二度とお会いすることはないでしょうが
ひとつだけ
誰かれ構わず 容易く優しい言葉をかけるのがあなたのクセですが
それ もうやめたほうがいいですよ
云った先から裏返してしまうような そんな言葉ならば
躰に気をつけて
どうにか生きていってください
傷つきやすいくせに図太いあなたのことです
きっと 百歳くらいまで生きるんじゃないですか
百歳になってもきっと
同じことをひっくり返しもっ繰り返し描いているのでしょう
さようなら
さようなら
遠くで雷鳴が聞こえてきます
どうやらまた
ひと雨ありそうな
どんより重たい
窓の外
コメント
自分のことしか好きじゃない二人が落ち合う。それが恋愛ではないでしょうか?
自分より他人を好きになって欲しいとは、相手に対して願わないです。自己愛と他者への愛の問題は難しいです。
すごく献身的な人が自分を大好きだったりするし、献身的になれない人が自分を好きになれなかったりする。男性の方が愛想を振りまいてしまう心理は私には理解出来ますね。博愛精神と言って本来誉のことでもあるはずなのですが、それを偽善だと感ずる人もいるのでしょう。男女二人が深く追求し、傷つきあった姿が描かれている気がします。
荒川濁流さんへ
いつもありがとうございます
この詩は、恨み節を込めた手紙のような形で描いたもので
この「あなた」は詩人で、彼の描く詩が好きで
それでまあ、色々あったわけなんですが
ちょっとね、云ってることとやってること違うじゃん
ってことがね、こんな人だったんだってガッカリしてしまって
「私」側からの一方的な恨み言、なのですが
たしかに仰るとおり、どっちも自分しか見てない感ありますね( ̄▽ ̄;)
博愛精神かどうかはわかりませんが
自分の云ったこと、やったことに対しては
ちゃんと責任持ててる人だと思っていたのでね
そういう人間が一番キライだって公言して憚らなかったですから
結局は一緒か、っていう
。。。。。。まあ、私もそこまで人を責められるほど大した人間でもないですけどね(^_^;)
ありがとうございました!