妊娠の反対側

無人駅のコインロッカーにて
通称「ニンゲン」は産声を上げた
29本の肋骨を触媒に
XXYを捏造 さらに増殖
それぞれの個体は金魚鉢に似せた子宮を持ち
(あるいは子宮に似せた金魚鉢を持ち)
量子状のRNAを生命スープで培養
転写を続ける塩基のアリアは
耳鳴りに重なる水色のハーモニー
機械的なまでに上下運動を繰り返し
約1時間で全ての個体が新たに「ニンゲン」となった

ボクは傍観者
一部始終を映像として記録する係でしかなく
まるで笑わない猫だった
もちろん逆流を止める術があるはずもなく
黒点に侵食されゆく地表 無機質な胎盤に
想いを馳せるのだった
果たして「ニンゲン」は世界を覆うのだが
生理が来ないと嘆く女に
もはや誰も興味なんて抱かなくなっている
絶縁体の効果も消えた時間が
空気に 斑に溶けていく
ある夏の日
ボクは傍観者
まるで笑わない猫になった

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.014: Title by かまち]

投稿者

大阪府

コメント

  1. SF小説のようでもありますがもちろん小説ではありません。紛れもなく詩です。というか詩でしかこういう表現はできません。詩の力。

  2. なんという困ったタイトル。
    このタイトルに果敢にしかもイメージがブレることなくここまで書ききるってやはりすごいな。
    妊娠の反対側か。生産とか人造とかサイバーな方面とかへ思考が巡ります。

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