夏空度數

夏空が
傾斜し出すと
未ダ残存してゐる事に
お詫び申し上げたい、と
思つてはゐるのだけど
あなたがたのお顔がどうも
思ひ出せないでゐるのだ。
夏空の傾斜が、
鋭角デ急デ有ることから
あなたがたのお顔がするりと
滑り落ちていつてしまふ
其レは其レで不可なひ事なので
拾ひ集めてはみるのだけど
あなたがたのお顔がどうも
此らで合つてゐるのかどうか
判らなくなつてしまふ
而シテ、
西の
夏空が
直角に峙つてくると
あなたがたのお顔がどうしても
にくらしくなるのだ。

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コメント

  1. にくらしくなる、の一節がぐっときました。思い出せもせず、こぼれおち、拾い上げてもパズルのよう、そしてまがる(すみません、なる、かも)とくれば。そりゃもうにくいだろうな、と。申し訳ないのはたぶん、原因が全部「あなたがた」のせいじゃないと思っているからで。袋小路ですね。

  2. 生きている自分。その対比とすると思い出せないのは死者の顔か? 夏と言えばやはりお盆。それとも終戦。夏の強い日差しの中で、目眩しにあったように思い出せなかった顔が、西の空、つまり西陽が指す頃になるとようやく思い出された。にくらしいのは、作者を残して先に逝ってしまったからだろうか?

  3. 夏を自分と人(あなたがた)との関係性で角度(度数)で表すのが斬新でした。

  4. なんとも言えない 懐かしさを感じさせる詩だと感じました。
    この詩の終りのほうも、すてきでにくいです♪☆^^

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