揺
1
「あんなに傾いているのに倒れないのね」
「なにが?」
「あの、塔のこと」
「傾いてなんていないよ」
――ゆりかご――
「傾いてるじゃない」
「そばに行けば真っ直ぐだってことがわかるよ」
――ゆりかご――
「傾いてるのは私たちってこと?」
「地球は丸いってこと」
2
「あれはなに?」
「ゆれぬかごだね」
「ゆれぬかご?」
「左右にゆれていたらゆりかごだけど、あれは中身がいなくなったようだからね」
「中には何が入っていたの?」
「さて誰だろう? おまえやわたしも入っていたのだよ」
「そんなの覚えてないよ」
「忘れる頃に中から出てくるものなのさ」
3
滅び去った世界に、動くことのない揺り籠がある。
「なるほど、でも見方を変えるとどうなるだろう?」
あたたかな羊水の中にいる、やがて揺れる存在。
「なら、あの黒い丸はなに?」
出口
絵:NEKO https://x.com/C18No3
コメント
面白いです。いろいろと考え込んでしまいました。
@佐藤宏
コメントありがとう! ゆらゆら考えましょう。
1、2、3が、それぞれ独立していて、それでいて3つで一つみたいな構成に感動の驚きを感じます。^^
@こしごえ
コメントありがとう!
もともとはNEKOさんがⅩ(Twitter)で絵をアップしたときに作った詩で、3つの詩を書いた時期はそれぞれ違っています。なので個々は独立した詩なわけですが、このサイトに画詩をアップするために見直しているとつながるものがあり、それをいろいろと試しています。なのでこしごえさんの感想をもらい喜んでます。大成功。