わたしに関する蝶
きわどい下半身の喪失
暗くてもそれをひきだして
おまえのために、蝶になる
悲惨な村の生活から脱出して
国際空港の地下室にダンボールのベッドをこしらえる
それはまるでパスツールの実験装置であり
手首からのびた神経で飛行機のオイルを盗み出し
とくとくと、したたる外国紙幣をねじ式にする
下着のままで空港を走り回り
そのトンビのようなくちばしで
旅行カバンに穴をあけていく
逃避行する大統領の背中に穴をあけて
半年くらいは棲んでみよう
高級時計の甘いベルトを口にふくんで
もらしはじめたスパイの言葉のままに
ジェット機のエンジンにわたしの羽をつめこもう
最新式の金属兵器が
無理矢理に地下室に隠されているのは
わたしの匂いがもう空港全体にしみついたからである
アケメネス朝の壺は腐らないワインを
古代ガラスの色であらわす
九月の空の落下する飛行機は
それでも年老いたわたしの両親を
スワヒリ語で感謝する
そのような蝶のかたこと。
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