消失した都市の記憶
東京が失くなったことを
まだ誰も知らない
映るはずがないテレビが
昔のドラマを延々と流している
貯水槽には油が浮いているので
飲めたものではない
とりあえず浴槽の水で我慢しよう
何も分からない幼な子たちが
走りまわるのが不憫でならない
もはやアップロードする場もないのに
散らかった部屋の中を撮しているだけだ
都市を人に喩えるなら社会は世界になる
世界は善でも悪でもない
その両方を兼ね備えているのだ
どちらかに傾いた時に
それを排除する仕組みが発動される
東京もどちらかに傾いたのだろうか
誰も気づかない以上
それを知る術はない
コメント
流石、出だしから一気に引き込まれます。
中庸だけが存続のキーワードかぁ。東京はどうしたんだろう?爆弾の代わりに大量のネズミでも投下されたんだろうか。
〈東京〉は記憶でしかなかったのです。
sososos喪失したTOKIOの延長線上に僕の故郷が有り、ということは僕の故郷も失われてしまったのだろうと実眼で見てきて思うんですよねー地球規模で喪失は起こっておるのではないかと…極端なほうに傾かなければいいけどねー
@あぶくも
光瀬龍の小説に「喪われた都市の記録」というものがあるのですが、この詩を書き、題を決めてから、なんか聞いたことがある題だなと思って思い出した次第ですので、全く関係ありません(笑。まあ光瀬龍は大好物ですが。出だしから引き込まれると言っていただいて大変嬉しく思いました。コメントありがとうございました!
@坂本達雄
失われた人の記憶というものはほとんどの人にとって存在しないものです。それがスーパースターであったとしても。東京はスーパースターですから。先日「Yesterday」という映画を配信で見まして、The Beatlesが存在しない世界というものを想像させられました。そしてこれはスーパースターではないけれども「フワちゃんが消された」というワードも(まあ私にとっては元々存在しないような人ですが)心に引っかかっていました。そういうこともこの詩が私の頭に浮かんだきっかけかもしれません。存在と記憶の曖昧さ。コメントありがとうございました!
@三明十種
極端なことになると消されるというアイデアは、そういえば西尾維新の「物語」シリーズにも似たようなものがありました。でもそういったことは人間社会では日々起きているのですね。例えば疎外された挙句の自殺なんかが。人間の集まりである都市でもそういう構図があり得るのだろうか、とか、考えてみたとかみなかったとか。コメントありがとうございました!
@たかぼ さん
重たい作品ですね。こういう作品は好きですが、何故かコメントしづらいです。
この作品のパラネルワールドの東京は喧騒がなく久々に空は高く青いのかな
都営団地の一室のカセットテープから杜甫の春望の朗読が流れてきたら決まり
だと妄想しています。国破れて山河あり〜。ほんと、詩にはいろいろあります。
@足立らどみ
重たいと言って下さりありがとうございます。確かに「グリーンハイツ」「千年紀」「消失した都市の記憶」とディストピア3部作みたいになってしまいました。でもホラー映画はストレス解消に役立つように、なぜか気分が少し軽くなりました。ストレス溜まってるのかな。コメントありがとございました!
この詩を読んで、amazarashiの「古いSF映画」という曲が浮かんできました
この曲では、近未来の荒廃してしまった世界と
巨大な、昔はシェルターと呼ばれていた、いまじゃ都市といっても過言ではない
そんな場所に生きる人々のことを歌っているのですが
あくまで映画の話だから、そんなに怖がらないで
どうせ世界は誰かの創作でしかないのかもしれないし
誰かの描いた筋書きかもしれない
ただ生きるためには、現実を受け入れていくしかない、とも
たとえ東京が消失してしまったとしても
生命はまだ続いているのなら
現実として受け入れていくしかないのかも
なんてことを思ったりしました
まずは飲水問題からどうにかしないと、ですね
@雨音陽炎
amazarashiというミュージシャンを知らなかったので「古いSF映画」をYouTubeで検索して見ました。とても良かったです。才能豊かなグループですね。他の曲も聞いてみたいです。教えて下さりありがとうございました。「古いSF映画」は、そうですね、この詩に託した雰囲気に似ているように思いました。コメントありがとうございました!
何度か読んでみたのですが、憤り、のようなものを、漠然と感じたような気がしました。
消失した人の記憶、とも読んでみると、「忘れられた日本人」という本のことも思い浮かびました。(内容は割愛ですみません、、)
東京は、流れ者の集まった都市とも聞いたことがあります。
まとまらないのですが、まさに示唆に富むとはこの詩を差すのだろうと思いました!
消失した都市の記憶、もしかしたら、この地球という星の記憶も、ともすると消失してるのかも、、、かもしれませんね?ふふ。
@ぺけねこ
東京はどのようにして消失したのでしょう。核兵器なのかそれとも超自然的な力によって文字通り消えてしまったのでしょうか。荒れ果てて水も飲めないような状況からは戦争のようなものも想像しますが、それならば誰も気づいていないのはなぜなのでしょう。幼子たちは元気に走り回っていますし、まるで世界にはじめから東京が存在せず、不便な状況は昔から日本がそうだったとでも言わんばかりです。このように私自身いろいろな疑問をもっています。小説ならばそのような態度は許されないでしょう。しかしこれは詩であり、まさに読者の想像にお任せします、と言ってもよいのでしょう。そのような詩の自由度というものは私のお気に入りなのです。示唆に富むと言って頂けて光栄です。コメントありがとうございました!
@こしごえ
消失した地球、なるほど、そうすると東京の無いこの詩の惑星は別の地球かもしれませんね。そしてそこに住む人間のなかで只一人だけパラレルワールドの地球の、そして東京の記憶を持っていると。これもまたおもしろいSFになりそうです。コメントありがとうございました!