つじつま合わせでもかまわないから
求めない 求めない 求めない
気にしない 気にしない
しない しない しない
云い聞かせる 頭に 心に 全身に
解ってる 解ってる 解ってるんだってだから
思えば思うほど 云い聞かせれば云い聞かせるほど
求めてしまう自分がここにいる
期待してただ待っている自分を
これでもかというほどに 思い知らされる
世界中で自分ほど憐れな人間はいないとばかりに
いちいち大げさにため息なんかついたりして
そうすりゃ誰かが立ち止まってくれるんじゃないかって
やさしい声のひとつもかけてくれるんじゃないかって 待ちわびて
足早に通り過ぎていく後ろ姿ばかり見送っては 項垂れて
やっぱりあたしにはひとりが似合いよなんてうそぶいては
心の中では全員不幸になればいいって悪態ばかり
騙すより騙される方がマシだと 誰かが云った
自分ほど馬鹿正直な人間もいないと また違う誰かが云った
馬鹿正直な人間が 馬鹿正直に人を騙し
騙していることにすら気がつかずに
平然とした顔をして こんにちはなんて挨拶を交し合ってる
とんだ馬鹿正直もあるものだと 困惑していると
それがこの世の倣いだと したり顔してまた違う誰かが嘲笑う
混雑する電車の中 泣き叫ぶ赤ん坊とその母親に
聞こえるようにあからさま 舌打ちしたことはないか
買い物をするとき 無意識に店員の態度をチェックしていたりしないか
処かまわずきゃあきゃあ騒ぎまくる女子高生のその口を
二度と騒げないように縫い閉じてしまいたいと思ったことはないか
人の眼を気にするあまりに 鏡やショーウィンドーに映る自分の姿を
何度も何度も確認せずにはいられなくなったことはないか
親切の押し売りをしたことはないか
親切の見返りを求めたことはないか
浮足立ってる人間を 心の底から軽蔑したことはないか
人は外見じゃないなんて 嘘つけよって思わないか
全員死ねばいいのにと 消えてしまえばいいと
一度でも思ってみたことはないか
自分よりかわいそうな人を探してはいないか
自分より劣ってそうな人を見て安心したことはないか
行こうと思えばどこへだって行けたはずなのに
行けども行けども行き止まりの袋小路だったことはないか
ふいに自分がいま何をしているのか 何故ここにいるのかわからなくなって
呆然と立ち尽くして動けなくなったことはないか
眠れなくて夜 ひとり子供だった自分と見つめ合ったことはないか
誰に届くことのない声が これでもかというくらいに
自分の耳にこびりついて離れなくて
どうにもやり過ごせない夜を明かしたことはないか
消えたい 消えたい
消してしまいたい
こんなあたし
くだらない くだらない
キライになる価値すらない
いつだって誰かと自分を比べてる
天秤はいつだって どちらか一方が少しだけ重い
求めない 求めない 求めたい
なんでそんなことばっかり云うの?
悪いのはあたしなの? 生まれたことが罪なの?
曖昧にごまかすのなんて
そんなの もういらないから
こんなどうしようもない人生につじつまを合わせたいための理由を
答えをちょうだいよ
生きていてもいいですか なんて訊ねてみれば
きっとみんな 口をそろえてこう云うはずよ
いいに決まってるじゃないかって
少しうんざりしたように肩を落としながらも
きっとダメだよとは云わないでしょう
解ってる 全部ぜんぶ解りきってる
だけど時々 あたしは思ってしまう 願ってしまう
もういい もう十分だから
そろそろ終わりにしてもいい頃合いよって
誰かがそっと 耳打ちしてくれることを
おかしいな
おかしいな
期待なんて とっくの昔に
燃えるゴミと一緒に捨て去ったはずなのに
おかしいな
おかしいな
あたしってば まだ期待してやがる
誰かに気づいてもらいたくって
誰かが助けてくれるのを待ち望んで
こんな詩を描き綴ってる
解ってる
解ってる
誰だってみんな
自分のことで精いっぱい
あたしだって
期待なんかしたって仕方がない
自分でどうにかするしかないって
それでも
それでも
期待ってやつは
どんなに根っこから取り除いても
また ひょっこり芽を出してくる
誰かあたしの声を聞いてよ助けてよと
お前なんかいらない必要ない
早いとこ消えちまいな
手を伸ばしていながら
拒絶されることも望んでしまう
どうせまた裏切られるだけなのに
どうせまた傷を増やしてしまうだけなのに
どうせまた失望を憶えるだけなのに
求めない 求めない 求めたい
期待しない 期待しない 期待したい
あたしがいま生きていることを
否定したくなんかないから
いらない人間必要ない人間だなんて
そんなふうに断罪したくないから
ただただ まだ見ぬ知らぬどこかの誰かと出逢いたいから
あなたのことが知りたいから
あたしのことも知ってほしいから
こんな気持ちのまんま
すべてを終わりになんかしたくないから
そこにほんの少しの期待をもったって
誰がそれを責めたててきたって
文句云われる筋合いなんか
これっぽっちも
これっぽっちもないんだから
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最後までお読みいただき、ありがとうございます
ある時、もう他人に期待するのは止めようと決めたのですが
おかしなもので、まだどこかで期待している自分がいることに気づき
期待っていうのは、どんなに根っこから引っこ抜いても
あとからあとから生えてくるものなのかもしれない、などと思いながら
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