観覧車

マグカップにたっぷり注いだ夜を飲み干す
不思議な街だった 夜空に月が無いのにいつもとても明るい
何から逃げようとしてあなたに捕まったのだろう
これ以上束ねられないように そう思った気がする

嘘で縛られる方が 本当に留まるより楽な気がした
体という体が心の暗喩だというのに
気付くには遅過ぎたのだ 星になれないことさえ
ふたりとも喋ろうとしなかった くうるりくうるり回る観覧車

本当は夜って明るいのではないかしら
私の目の方がきゅっと抓むんで朝を明るいと言いたいだけで
暗いと言っておけばそこにある美しいものが
誰にも暴かれないと思って神様が守っただけなのではないのかしら

朝も昼も夜も働いていて だから見えるものだってあって
首が捥げそうなぐらい 神様を探して 見上げて仰いで
やっと触れたモノは偽物だったかもしれないなんて ウソ
残るのは金だけ そう言って生きてると 何か楽しい

私を見てると分かるでしょう 自分勝手だって
せめても静かで落ち着ける家を見付けたい それだけ
ぶった切るように何も言わなくなること 不思議なのなら
教える 私が何かを言ったことなんて 一度もないせいだよ

何もないことを 皆がこぞって見に来る 変な街だった
ああ 綺麗な街だね でもそこには 私の場所はない
知っている人も 帰るべき場所も 通った学校も なんにも
ただ 記号で呼ばれ 歯車として噛み合わされる

あなたもきっと 私を捕まえ損ねるんだろう
私は笑うと思う 捕まえて欲しかったのにって
逃げたつもりも追いかけたつもりもない
黙って立っているだけの私から 逃げるのは あなた

投稿者

神奈川県

コメント

  1. 「私」の現実と「あなた」の現実が、切ない位に噛み合う・もしくは、噛み合わない 詩だと感じました。

    気付くには遅過ぎたのだ 星になれないことさえ
    ふたりとも喋ろうとしなかった くうるりくうるり回る観覧車

    ここの、くうるりくうるり回る という心情と観覧車の表現が印象的です。

  2. @こしごえ
    感想有り難うございます。
    色々なんとなくで書きました。特に後悔はないです。

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