母親

毎夜 阿婆擦れの月が
 淫靡な触手を伸ばしている
毒虫の腹の光沢 反射するイヤリング
 こんな時間になっても彼女は
苺色した口紅塗って
 鏡の前で微笑を貼り付ける
母屋の裏で待ち続ける姿
 寂しさ と呼ぶのか

新しい顔の男は汚らしく
 なおも倒れたままの位牌だった
覗き穴から漏れる囁き声
 どんな格好をしてもいいからと
規則正しく並ぶ布団の上で
 まずは三枚の紙切れを掴み取って
親しげに乱れ交わる姿
 侘しさ と呼ぶのか

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.007: Title by 中村トクシ]

投稿者

大阪府

コメント

  1. 母親をこういう彩りで語るのは、どこか寺山修司のイメージがあります。よくみると毎夜、毒虫、苺色、母屋とみな母がいて、ビジュアル的にもやはりトノモト詩は練られています。
    どうあがいてもマザコンのラベルははがせません。寂しくも侘しくもそういうもんです。

  2. そうですね↑ なるほどアングラな演劇のような風情がありますね。技術的な部分も含めてトノモトさんらしい。

  3. 僕には到底書くことの出来ぬ詩です
    複雑に構築され時間を経ての己への書かと思います
    コメントのやりとり方も苦手でよくわからないのですみません

  4. 毎から母になるまでの一連と、新から親になる二連。侘び寂びの対。三万円の売女。あるいは二万五千円、あるいは三千円か。それを覗くのは息子か。
    技巧もさることながら、立ち上がるイメージの強さに唸ります。これは完全に好きなヤツです。

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