ひきちぎられた神
モダーンな空気です
ジルベルトの殻から発せられた
ゆるめたベルトの下には
たるんだ腹がふにふにと、ももとせの
シャルダン候はヘーゼルナッツを指につまんで
蒸した鴨の姿のままにオクターブ高い
ストア学派の勉強会に参加するのは
応接セットの銀糸刺繍の椅子の背凭れに
トルコ石の孔雀の眼で
全世界の支配する絹の糸がきらきと巻き取られていく
ラズベリーの品種をあかるい窓辺に見せられて
シェリーのグラスにそれをころがしている、あなた
インドラの戦いに敗れて戦場には
血と死体がごろごろところがっている
絵画の下絵を確認してから
塗り込められた陶磁器の肌で
琥珀の指先で
ダイヤの粒を幸福というのだとしても
愛の告白の手紙の最後にはロワールの薔薇の香水の香りがほしい
凍てつく寒さで馬が凍死する
馬車も凍り付く、わだちのしみわたる
ここいらで村人の手がとまる
過去のすさまじい記憶と言うものは
今でもアネモネの花の色のように
さわやかに
そしてせまりくる。
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