被暑地

少年の濃い影、
隠れようともせず
手際よく

蜷局を巻いた積乱雲
農機具小屋のトタン屋根に
鮒の眼、抉り捥いで
雑に投げ込む
抉つた痕、弐、ギザ十、埋め込む
紅い鰓が、
血泡に溺れてゐた

此の一連の儀式は
少年の、
ひと夏の、
密かなたのしみなのだ

さうださうさう、さうだらう、
鮒の眼は、
灼熱のトタンの上、だ
蒸滅しかけの
白濁したレンズ部分に
少年のきれいな笑顔が
逆さまに、
映つていた

これら一部始終を
連れ込み旅館の二階から
私は慶尚南道の女と眺めてゐて
履き直させた黒い下着を
また脱がせにかかつた

投稿者

山口県

コメント

  1. テテテテ、テテテ、テーレーですね。
    少年期の無慈悲でおどろおどろしい遊び(儀式?)の濃密な描写が素晴らし過ぎる。

  2. 人生を四季に例えるなら少年期、青年期はまさしく夏でしょうな。狂ったような暑い夏。同時に狂気を孕んだ夏。死とは正反対の生命力。しかし命あれば死もある。それは一対だ。青少年の命の象徴であるアポロンと死んだ鮒の対比。

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