冬の蟻

 駅裏の小道
 音楽堂への石畳
 今日は音楽会が無いのだろう
 人影途絶えて大きな丸屋根だけが黒い

 つよい風に煽られる髪
 十二月の風は金管の旋律になって
 とうとうと胸をゆさぶり
 足許にうず巻く南の砂漠で
 埋もれていく
 私は 蟻なのか?
 なんと気ままな蟻なのか、
 夢を求めて魂の欲求に従い這いずり回っている

 やがて眩暈や耳鳴りが私の存在を
 忘れさせる程
 砂紋の冷たさに耐えられなくなり
 うずくまってしまう

 心に澱むゼリー状になったものの
 得体の知れない貌でもあるのか
 向き合ってみる日々
 出口が見えないトンネルで
 目にくっきり焼きつくだろう

  この冬の、稲光の色

投稿者

滋賀県

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。