ベストポジション (①)
旅行カバンは窓枠の上に置かれていて
窓枠は乾いた歴史学の授業に遅れそうである
ツインスターの教科書にビールの泡がこぼれる
夜間の照明灯はアスファルト舗装のタイヤに呼応する
人類的規模のイマジネーションで君は
溶けつつある氷河のマズルカに従い
氷釣りをする少年の背中に
イルカの声で〈おしえて〉と言う
鼻声の君のために正月は遅れて来る
ただひとりの友人が炬燵にはいって
今月の詩の中から、選ぶのは、つまりは
チャウスカヤの結婚の日から、わだかまり
さらには地中海の戦争の始まりに憂慮する君たちの
おぼつかない足取りの平和行進のあけぼのの
くさりを腕にまきつけているわたしたちの
透明であばかれたしのばずの池のにごりにたたずみ
そのヒラメ顔の園庭長のにぎられた手を知る
わかくしてトナカイの背にくくられた
モンド、その苦しみに抵抗するヒイラギのくちびる
やがては真空の地平に、君たちは釈然と
抗議の旗を立てている、わが友よ
海底山脈のオートメーションだとしても
浸水する海底火山の欲望する場所で
たちまちに、ゆるぎない、潮のひきよせられて
まだ目覚めているトリコロール
わだちのすりきれの天職のピーチパイの
ダンスするうみどりの
バスターキートンの歪んだ笑顔で
君に大挙してこのむしろをあげようではないか
わたしは知っている、そのままに
わたしは歌っている、そのままに
キビナゴのうつうつと
ベストポジションをとるはずだと。
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