かつて在ったもの
街なかに廃屋がある
今にも崩れ落ちそうな
雨は降りつけ
日は照りつけても
何も変わらず
在り続け
ある日現れた覆いが
工事を知らせ
やがて重機が
なぎ倒すように
バリバリと壊してゆき
気がつけば更地に変わり
両隣は変わらないのに
ポカリと開けた空間に
どれだけ思いを馳せても
元から何もなかったように
私の記憶も空白に
上書きされて
私は街角に立ってみる
そして
歌って / 笑って / 泣いている
その前を
通り過ぎる人々の波
やがて私が立ち去っても
人々の流れは
変わらない
私がいない空白は
埋まらないのに
変わらない
知らぬ間に「いま」が
記憶を上書きしていく
コメント
私も、どの道、無に帰りますね。^^
@こしごえ さん
コメントありがとうございます。
記憶というのは不思議です。普段思い出さないことが、ン十年もしてから夢に見たりします。
私もいつか無に帰る訳ですが、忘れたころに誰かの記憶に現れたりするのかな、と。
街なかで通りすぎる景色は忘れてしまうものも多いけど、幼いころの思い出の景色はなかなか上書きされない景色だったりするのは、関わりの深さの差でしょうか。