逝川(せいせん)
人知れず 涙を零す夜もあるのであった。
そして、十月の
秋の光に
芒やねこじゃらしが
輝いている時も
あるのです
草紅葉の
幽かな呼吸音を
聴く
こおろぎの耳
みずからの歌に
耳を
かたむける
私の
目に映る
草紅葉のしぶくやわらかな姿
遠く
あなたの
声がする
遠く
人の悲しみ
人のみにくさ
人の美しさ
人のぬくもり
人は複雑な生きもの
人も愛したい
私を
思い出という名の逝川が流れて
冬になれば
ふりしきる雪の葬列にしずむ
静かさ しんしんとする 魂といういのち
コメント
※ 逝川(せいせん)とは、
① 流れ去る川の水。一度過ぎ去ったら再び戻らないもののたとえ。
② 過ぎ去った時間のたとえ。
( ※の上記の意味は、『全訳 漢辞海(第七刷)』(三省堂)の
「逝(せい・ゆく)」より引用しました。
「逝川」は、「顔氏家訓」(顔之推(がんしすい)著)に出てくる言葉とのこと)