ベストポジション (⑥)

狭い室内で隠れていることは
どこかに逃亡した著者の形骸である
無慈悲な言葉遊びのついでに
ジャンポールサルトルの〈出口なし〉に出会うのである
蟹の隠れた穴に海水が来て
核弾頭のミサイルの穴に蓋がされる
できることなら、できふできを語ることもなく
直立したカメレオンの足の頼りなく
その返し技、地面に手をついて
セミのような声でタクシーを呼ぶばかり
チンゲンサイの炒め物が照り輝いて
海上交通のやすやすと漂うこの船底でうちつける
カットした茄子のへたにもうすく
ピアノ演奏とオーケストラの瞑目する
近代の演奏家を批評するためのページである
楽譜は確実な言葉のために
指揮者の耳に語りかけてくる
もうリリックではなくて、はみだす音もなくなって
孟宗竹の頼りないことわりで君と僕の
明日のベッドが運ばれている
ややもすれば歴史のうたかたに閉ざされる
旅行会社の支店のドアであり
またドアを開けては風のはいる昼すぎの
タシケントのバスについて聞かれるとしても
早朝の金属的ラッパの音楽とも言えないものに
ひとつのカバンと絆創膏でカバーできるもの
それくらいで良いのである
バスに乗り込む君と僕
どうか今日の夕方には
地図に印をくださいと。

投稿者

岡山県

コメント

  1. ひとつのカバンと絆創膏でカバーできるもの
    それくらいで良いのである

    これ位 シンプルに生きられたら すっきりするでしょうね。^^
    私には出来そうにありませんが。ふふ。^^;

  2. @こしごえ
    さんへ、毎日がとてもミラクルである、この地球の秋の日々に、どのようにしてか、もしくは、どれほどかの不渡り手形を出すかして、旅の人になりたいのだと、ふつつかに、ふたしかに、思うのです。ふふふ、ぶふふ、・・・

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