踏切音
右斜め前に居る若い女が
肩越しに振り返り見る
駅前の小路
私も見返る長蛇の列の脇を
ゆっくりのぼって来る塵芥車
開いたテールゲートからは、あの臭気ただよい
十分間ほど蠢いていた空しい流動
京阪の踏切音が鳴り止むと
遮断機上がった直後、
高らかに近づいて来る救急車のサイレン
通りから見えていたJRのホームに
私の乗りたかった
午前七時二十三分の電車はもう消え去って
前を歩く腰の位置高い男の尻を
まじまじ眺め
その曲線美で気を紛らわす
どんな一日になるのだろう
騒音を呑みこみながら
鈍い走行音で踏切を渡る塵芥車
臭いと共に立ちのぼる熱気が
吐き出す場所を求めて散っていった
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