野の声 (③)
君自身はアジアの小麦であり
かつて戦争の時代にはアノマロカリスを食べた
犯罪はいきなり睡眠をもたらし
恐怖の宍道湖は夕陽の照り輝きに照準を合わせる
それでも泣く子はどこにもいないのだ
白い萩の花には君の過去が短冊となって添えられている
その行進曲は葛飾北斎の袖に隠れて
暗黙の絵画取引の現場で
大量のマキシミリアムが散りばめられている
極道の背中のしたたる絵画の
その放心されたちょうつがいに下草が燃えている
さらばという、鉄道施設団の舎弟の声で
ゆずられたピストルのくろがねの
まだやわらかい命のバイタル
渓谷はすでに秋の気配であり
すごみがますこの谷川の女たちの嬌声
ウクライナで君は小麦の穂にいきなり水平にあざむく
ロシアで君は大麦にさわやかな駱駝の怠惰にあざむく
チリ産のワインにただこうしてグラスにあてどなく
しみじみとした味わいの
ドローンたちが空に愛の模様をつぎつぎと描くのだ
だとしても君のアイライン
ズンダランドの香水の木に蝙蝠の羽がひっかかる
だとしても君からの甘いくちづけ
立ち止まり
あらゆるデジタルに
声の歌で収穫する、わたしは
月日のそのスローボール、いたわれる野にいる。
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