野の声 (⑦)
投票所の近くで女が歌っていた
《この国を愛しているから、わたしを愛してください》
そしてわたしはその女を愛した
投票用紙に《女》と書いた
それからわたしはひとつの時間を造り上げて
神の前に差し出したのである
ゆくりなく見つめるこの時代の〈精神〉
それは急にガリラヤ湖のほとりに沈もうとする
見るからに古い化石の時計が砂に埋もれていて
それを見つめているわたしは、蜥蜴のようである
女はまるで蛇のようにわたしを飲み込んで
それから西の海に身を隠そうとする
あまりに女の下腹がなめらかであるために
海は透明な意識となり
この地球と言う星はキャラメルである
ぶしつけな欲求ばかりで
この大地は小麦色にトレースする
バターの匂いの女の肌から蛇の鱗をむしりとり
そして透明な太陽にかげりを見つける
バハナの港には女の腰がゆれている
短いまつ毛のマリアの像が肌を黒く塗られて
そのままでは海水にけだるくなる
愛する知の逃れられない論理のままに
黒いマリアにくちづけする
おお、まさに閉ざされた女の愛の楽園
干してある魚たちの間から
投票所が見るのだ。
コメント