ぼくの心臓
食堂に売っているぼくの心臓は
いつまでも売れ残っているから
購買部に移動することにした
けれども先端恐怖症のぼくの心臓は
三角定規が怖いし コンパスも怖い
購買部を牛耳る販売員の目は鋭く
なぜか折り鶴が飾ってあってその節々が怖い
とにかく全体的に怖い購買部からも離れて
異国の匂いが沸きたつ給食室に逃げこんだ
給食室では変死した動物が
食肉へと変身を遂げていた
そうかぼくの心臓もここで変身してから
食堂に並べるべきだったんだ
なぞと形ばかりの反省をして
遠慮がちに汁物(朝鮮料理)に浸かった
そうしていると
故郷のようだとまではいかないが
おもったよりも心地がよく
緊張が解きほぐれてゆくぼくの心臓は
いつしか眠っていた
そして目を醒ましたときには
何者かの胃の腑の中にいた
けったいなものを食っちまった
今日の飯は失敗だった
そんな声を聞きながらぼくの心臓は
もういちど眠りについたんだ
コメント
詩を書こうとするとね、僕はかなりの高い確率で学校を思い浮かべてしまうのねー僕は僕自身を食らい続けてきたのだなーと、(変なコメントでごめんね)
爪は切るまでは自分の一部ですが切られた後の爪は自分ではない。摘出された心臓も同じ。僕から離れた他者として語られるのですが一方で「ぼくの心臓」として僕と同一視しているところが斬新で面白かったです。
@三明十種
おれは学校にまにあわない感覚で書いているときがあります。
喰らいつづけ生まれつづける、この詩の完成に近づいた気がします。
ありがとうございました。
@たかぼ
ありがとうございます。
ある意味他者感があって、一緒に旅をしているようでもあります。
プロペラをつけてみたり、根っこをはやしてみたり、心臓にはなにかと負担をかけています。