ぼくの心臓

食堂に売っているぼくの心臓は
いつまでも売れ残っているから
購買部に移動することにした

けれども先端恐怖症のぼくの心臓は
三角定規が怖いし コンパスも怖い
購買部を牛耳る販売員の目は鋭く 
なぜか折り鶴が飾ってあってその節々が怖い
とにかく全体的に怖い購買部からも離れて
異国の匂いが沸きたつ給食室に逃げこんだ

給食室では変死した動物が
食肉へと変身を遂げていた
そうかぼくの心臓もここで変身してから
食堂に並べるべきだったんだ
なぞと形ばかりの反省をして
遠慮がちに汁物(朝鮮料理)に浸かった
そうしていると
故郷のようだとまではいかないが
おもったよりも心地がよく
緊張が解きほぐれてゆくぼくの心臓は
いつしか眠っていた

そして目を醒ましたときには
何者かの胃の腑の中にいた
けったいなものを食っちまった
今日の飯は失敗だった
そんな声を聞きながらぼくの心臓は
もういちど眠りについたんだ

投稿者

茨城県

コメント

  1. 詩を書こうとするとね、僕はかなりの高い確率で学校を思い浮かべてしまうのねー僕は僕自身を食らい続けてきたのだなーと、(変なコメントでごめんね)

  2. 爪は切るまでは自分の一部ですが切られた後の爪は自分ではない。摘出された心臓も同じ。僕から離れた他者として語られるのですが一方で「ぼくの心臓」として僕と同一視しているところが斬新で面白かったです。

  3. @三明十種
    おれは学校にまにあわない感覚で書いているときがあります。
    喰らいつづけ生まれつづける、この詩の完成に近づいた気がします。
    ありがとうございました。

  4. @たかぼ
    ありがとうございます。
    ある意味他者感があって、一緒に旅をしているようでもあります。
    プロペラをつけてみたり、根っこをはやしてみたり、心臓にはなにかと負担をかけています。

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