齡五十にして爪を嚙む
嚙みちぎつた爪は道に飛ばし
飛ばした爪は風で舞い上がり
夜になつたら三日月になる

今宵もそんなで
寝床の上で爪を嚙む
右親指から順に
左小指にかけて
三日月をなぞるやうに

齡五十にして爪を噛んでいる
妻につんでもらつた事もあるが
毎回毎回お願いするのも
気がひけてしまつてね

今宵もそんなのだから
爪を噛むのは止められない
深爪にしてしまえば
爪先にうつすら血が滲み
赤い三日月が浮かんでくる

投稿者

山口県

コメント

  1. 爪についての、のっぴきならない物語を読んだようです。
    この詩の静けさに物思います。

  2. はじめまして。語り方がしんとします。
    突然のコメント、失礼いたしました。
    読めて良かったなあと思ったので、いてもたまらず、といったところです。

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