館長の話

水族館から
水族が溢れ出した
水族は移動を続け
乾燥地帯にも
幾ばくかの水分をもたらし
貧弱な草木を発芽させた

水族館の後には
館と館長だけが残った
館長の手の甲にはいつしか
プロペラが生えた
プロペラは空を飛ぶには
あまりに小さすぎたけれど
回せばほんの少し
指先が涼しくなった

長い年月が経つうちに
何の館長だったのか
すっかり忘れてしまった
それでも思い出そうとすると
淡い幸福感に包まれるので
幸せだったのだ、と思った

投稿者

コメント

  1. なんか摩可不思議な詩ですねーつかみどころのなさが詩なんだよなーと思うよねープロペラ生えるくだりが突拍子もなくていいですよねー

  2. この詩のタイトルと冒頭から来て、最終連が肝ですね。
    ああ、最終連を拝読して、こちらまで、なんだか幸せな気持ちになりました。

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