慕情の色

 ゆさぶられる
 青ざめて乾いた梢
 閉め忘れた窓から一枚の枯葉を伴って
 風の夜が来た

 男の胸のすみからすみまで
 耳を押し当てて鼓動を数えているのは
 幸せな女なのだ
 その音の絶えるまで確かめようとしている
 女は
 一人ですごす長いよるを、
 涙でいたくない
 両の手でつつみこむグラスをそっとかたむけてみる
 ブドー酒の色

 赤黒く もえ立つ
 重苦しい胸の騒めき
 鳴り響くものを全て掌のなかへ流し込んで沈めたい
 風の夜よ
 お前にそれが解ろう筈もない

 風の夜が来た
 すすり泣きかけている女に
 熱く くちづけようと大胆に忍びこんで来た
 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 慕情の色とブドー酒の色と「女」の思いなどが共鳴(リンク)している詩ですね。

    風の夜よ
    お前にそれが解ろう筈もない
    と言うけれど、風の夜の存在などが染み入ります。

  2. >風の夜が来た
    ここの表現、いいですね
    夜の風、としそうなところ
    ちょっと意表を衝かれました(#^^#)

  3. @こしごえ
        様へ

     お読みいただきまして、ご感想のコメントをお寄せくださり
    どうもありがとうございます!嬉しいです。(^^)
     ブドー酒の色 という表現が気に入ってこの作品を書きました。
     
     近頃、リリーは立原道造さんの詩集をいつもカバンに入れています。
    ひらがなの使い方なども影響を受けるようになりました。

  4. @雨音陽炎
        さまへ

     いつもコメントくださって、どうもありがとうございます!嬉しいデス。(o^^o)
     この作品のタイトルは、最初「風の日の夜」でした。それで、自分では特に意識
    無く「風の夜」という表現で綴っていました。

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