切通しの道 (⑥)
グランドフィナーレ、奥さんの心臓が破裂する
これは単なる言葉です
ノジギクの清楚な姿に八ヶ岳への展望が、飛脚する
グランドキャニオン、娘さんの郷里は水郷です
ニジマスが百点満点の声で歌うので、水は、水中は
震えます、ゴールドラッシュのつるはしのように
ほくほくのタラの芽の天婦羅です、ゴーシュのような
天神さんの船がゆく、ほかげがゆれるかわもにゆれる
大井の競馬場の歓声が北海道の馬の耳にもきこえるから
ふしめがちのこの娘の首の細さも馬の耳のようなものだと
なにやら、とんがったものがウクライナの空を翔ける
かんざしのきらきらとゆれる瞬間に娘に声をかけて
かなりの爆発で住宅としての建物が破壊と炎と部屋とぐしゃりと
そのままでいいから、ただわたしの胸に顔をあずけて
やすらかなシングルベッドのうすぐらい白髪の薬缶の音
ぐじゃりと、つぶれて、破壊した破壊の現在をふき飛ばしている
思考はもうすでに、男たちのかついだ〈銃〉
塹壕の中で細い煙草を吸う
柳川の船でゆく、花嫁の瞬間の、破壊される顔
骨にして、骨がくだけて、血は川面に飛び散るよ
ドニエプル川の川岸に娘が未来を夢想している時
けだかい神の思想は、湧き水の流れに鯉たちがゆらゆらと
ものもうすことはせずとも、山並みは朝露に麗しく清らかに
はや君の未来は船に乗り
しばらくは午後の湧水とともに、恋人のもとへと至る
さらば、さらば、ミサイルよ、麗しい空の虹のように
一瞬間の愛の結実の花嫁は調べとなる
いと清らかな骨がつきでる。
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