追憶
時間を
静かに呑み込む。
香りは喉元を伝って
いくつかの境地に
辿り着く
ひとりでいた時間
潤んだ空間。
言葉を綴るとき
不安のちいさな塊が
よみがえってくる。
それを詩と呼ぶのなら
私はどこまでも
時間を下りていく
悔恨のように。
現実は
そこにあるのではない
柔らかくずれているのだ。
現実を信じてはいけない
喉元を伝うと
追憶と被さっていく
うねりの底に消えていく。
香りだけを
覚えておくことだ。
時間を
静かに呑み込む。
香りは喉元を伝って
いくつかの境地に
辿り着く
ひとりでいた時間
潤んだ空間。
言葉を綴るとき
不安のちいさな塊が
よみがえってくる。
それを詩と呼ぶのなら
私はどこまでも
時間を下りていく
悔恨のように。
現実は
そこにあるのではない
柔らかくずれているのだ。
現実を信じてはいけない
喉元を伝うと
追憶と被さっていく
うねりの底に消えていく。
香りだけを
覚えておくことだ。
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コメント
「現実は
そこにあるのではない
柔らかくずれているのだ。」
というところにハッとさせられ、この詩の独特な余韻のようなものを感じます。
毎日同じ道を往来していても毎日違う風景になるわけで、ましてや人の心なんて1秒ごとに移り変わっていくわけで、現とうつろ、ぼくらはその間をあたふた行ったり来たりなんですよねーなに書いておるのか分からなくなりましたが、ありがとうございました。
@あぶくも
あぶくもさん、現実は、一瞬、一瞬で、記憶になってしまう。捕まえることができないのではないか、と思うことがあります。香りだけに留めておくべきではないか、…と。
@三明十種
三明十種さん、そうですね、人生はひとり歩きです。現とうつろの狭間をさまよっているのかもしれません。詩を書きに、時間(現実)を遡ります。その途上での言葉が詩になっていきます。悔恨かな。
凄く印象深い詩でした。最後に残り香のようなものがすごく濃くて、少し酔ったような素晴らしい余韻に浸ることができます。いろいろな苦渋も昇華していって美しく消えていくような感覚です。
現実ばかりにとらわれてはいけない、ふとそんなことが浮かびました。香りに、そう教わるような。
ほっ、とした時間、空間がみちてくるようです。
@ザイチ
ザイチさん、最初に、香りと時間というテーマがあって、それを膨らませるように書いてみました。酔うという感想は嬉しかったです。時間に酔うという感覚もありました。哀しい酔いではありますが。
@ぺけねこ
ぺけねこさん、現実は、やはり少しずれていると思うのです。…でなければ、やりきれない。そうですね、現実ばかりにとらわれてはいけない。でも、現実を見失ってもいけない。その狭間がむずかしいです。
「香り」というものが好きで纏ったり感じたり言葉に変換して匂わせたりするのですが、長谷川さんの香りが追憶としてからだを流れ下る様の美しさに浸りしばし幸福になりました。
@たちばなまこと
たちばなまことさん、時間を香りと表したいという気持ちがありました。私の場合、あまり美しい時間ではないかもしれません。でも、過ぎた時間へのいとおしさはあります。読んでくださりありがとうございます。