雨の朝

 或る雨の朝
 しぶきに打たれる鋪道の
 流れる水の勢いを感じながら
 あなたを
 久しぶりに思った

 夏の始めの山は緑だから美しいし
 きみは緑の年だから美しい と
 乾いたくちづけをしながら囁いて
 冬の始めの海は黒くて激しく
 きみは海の様だから底知れない と
 去っていった あなた

 (空しいひとときの春の愛の重さは
  生命の中に入り難く
  意識の上にのり難く)

 うすぐらい空のすみっこで心が混濁し次第にすきとおっていく
 ほんとうに なつかしく
 憎しみの一かけもなく
 あなたを思い出すことが出来た
 

投稿者

滋賀県

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