雨氷

 
 湖沼の堤へ柔らかに
 すいこまれていく霧雨は
 昼と夜の境に降りつつ
 銀箔を纏って鈍く光り水沫も作らず
 死に絶えていく

 冷たい掌を握りしめる私と
 あなたの愛とが各各遠く孤立し
 すでに呼びあうこともない

 私から離れて異国へ行くという人の美しさ
 目くらみ涙も出ようとしない
 ほのぼのと燃える激しさを
 内に押し包んで尽きることのなかった
 あなた
 私の不安定な烈焔をゆっくりとゆさぶりながら
 慰めてくれる人だった
 そのあなたが、もう
 微笑みかけてくれる事はない

 胸を浸す寂しさが離れない
 今、
 見えないけれど
 いつか私にめぐってくるだろうか
 あらたまの立つ月の幻
 
 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 最後の和歌の風流な言葉が見事にきまってますね。

  2. @たかぼ
       様へ

     お読みいただきまして、ご感想のコメントをお寄せくださり
    嬉しいです。どうもありがとうございます!
     最終連は、締めを捻ってみました。^^

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