母①
私のお腹の底の底の真っ暗闇にいたのは貴女
それほど貴女への怒りや怨みが深かったのだとホッとした
お母さん
貴女を愛してる
だけど貴女は私を愛さなかった
何歳の時だろうか
お母さん、貴女にさくらんぼのブローチを贈った
お小遣いを全部はたいて買った
貴女に似合うと思った
貴女は大袈裟に感謝して受け取ったけど
そのブローチを着けてくれることはなかった
冷たいひとだった
あれは中学二年の時
帰る途中で集中豪雨にあって
全身ずぶ濡れで帰ったとき
貴女は私の制服をアイロンあてて乾かしてくれたが
ずっと不平不満、文句を言いっぱなし
あんまりブツブツ言うので、
つい言ってしまった
「お母さんは、私の身体と制服の、どっちが大事なの?」
応えは無かった
嘘でも
「あんたに決まってる」
と、すぐに言ってほしかった
正直だけど、愛さないひとだった
お父さんが、大好きな晩酌を静かに楽しんでる間中
貴女は、お父さんがどんなに駄目で自分がどれほど偉いか、
ずっと喋り続けた
温厚なお父さんもキレて
皿を投げつけた
私たち子供は
「お父さんが酒乱だからだ」と
お父さんを恨んだ
恨む相手は貴女だったのに
貴女は
とにかく支配することを好んだ
「私の言う通りにしていれば間違いない」
貴女はよくそう言った
私は大人しく従った
私の立場は
貴女のお気に入りの自慢のアクセサリー
せめて、生きていることを認めてほしかった
貴女は父と一緒にねむりながら
「○○さん、本当に好きだった」
と、他の男性の名前を何度も呟くのだ
駆け落ちでもしたかったのだろうか
もしそのタイミングで私を身籠ったのなら
お腹の中にいるときから
さぞや私を呪ったのだろう
私はいつも
「生まれてきて、ごめんなさい」
と謝っていたのだから
お母さん、貴女は私をよくお金に換算した
「あんたを育てるのに2000万かかった」
自慢げに言う
何を自慢したかったのだろう
だから私は貴女の付属物だと言いたかったのだろうか
私はそれを聴いても怒ることなく
申し訳ないな…と思ってた
ちゃんと怒れば良かった
貴女が死んでも何とも思わなかった
貴女は私の中にいなかった
だから「両親の墓参り」ではなく「お父さんの墓参り」だった
ザマーミロ、ザマーミロ、ザマーミロ!
私は貴女に復讐を果たした
生んで貰ったこと、育ててもらったことに
感謝すべきなのだろう
実際、客観的に見ても、貴女は良く働いた
けれども、私のこころを殺し続けた貴女に
どうしても感謝する気になれない
まずはちゃんと怒りたい
それが祈りに変わる時、
貴女は真に赦される
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