魅惑の大雪警報

君がまだ幼い頃、僕は父であろうとして、数々の悪路を走り切ったのである。背中に水神のほりものをしていた。その神が火を噴くことで我が家は暖かく君の肌は守られていた。けれどもいつしか水神は、あきらかな肉親の骨となり、その荒廃した都市からの肺腫によって、けだるくほろほろと僕の父としての意気地を砕いたのである。それは悲しみとしての北国の気配である。雪が降っていた。その小屋の屋根に高く積もっていた。君の母はたくましくその屋根の上にのぼり雪を落とそうとしていた。数えてみておくれ日数ではなく、母の胎内の静かな雪の日を。まもなく誕生するであろう君自身の雪からの逃走と言うべき知の変調する瞬間の降り出した雪の重さを。しだいに堅くなる踏みしめられたこの道のもりあがり、そしてつぎにはへこんでいく、精神のどどどど、気温とヒッタイトの感覚でみじめにスリップする。君の肌に触れるものは感覚としては絹のようであれ。だだだだ、景色的変化が君の肌にすみやかな体温の沈下を余儀なくさせているのだ。できるだけ顔の皮膚に雪の印を置くことをせずに、そして申し開きする屋根の上の傾斜する足場のとてもすべりやすくて。ただただ君の尻のあたりにぬくぬくと父としての僕の手の冷たさを我慢して欲しいのだ。雪はほとんどの場合は空の上方からわたしたちの上に降りて来ると言うわけだから、母は君の胎内時間とともに、母は君を胎内時間として、君の心臓の音楽をバイオリンとオーボエの変調であると認識するだろう。楽器を手にして君は母の胎内で〈雪の歌〉を演奏している。その演奏が肌にあらわれて、そして感覚するものはしだいに母の脳内の不変的シンジケートである。それからのジャンルとしてのリズムタッチ、ジャズ的胎内演奏、ドラムの気配する堪能するべき夜のシュワイヤー、人のテック、それはもれいでるチック、そして界隈に召喚されるべきホメイロス。君がその喜びの歌で母の道をぬるぬるといでる時には、あまりに水神の口で吐き出す悪弊の、ぼーどーする、へいしゃする、じくじたる、かんのんきょうの、へそとへどのぼろかすに言う。そしてそれでも母の愛の大雪警報です。それは魅惑する明解な網膜であれ。

投稿者

岡山県

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