喫茶店

彼女は古い喫茶店に行くのが好きだった
真新しいレストランより
いつ建てられたのかわからないような古い喫茶店に行きたがった
でも彼女はせっかく喫茶店にきたのにコーヒーには目もくれず
いつも決まって端の席に座り
いつも決まってクリームソーダを頼む

ぱちぱちと炭酸が抜ける
透き通る緑色が
いつも彼女の目を惹きつけていた
ストローで大切に大切にソーダを飲んで
おいしいとぽつりと溢す
そんなに美味しいなら一口くれても良いのに少しも譲ろうとしなかった

飲み物一つに夢中になれるのが羨ましくて
同じ物を何回も味わえることが面白くて
僕はいつも彼女と喫茶店に行ってしまう

次は小さなサンドイッチを食べてみようか
日当たりの良い席に座ってみようか
いつもは読まない長い厚本を
飲み物の片手間に読んでみようか

あそこに行く理由をいくらでも作るから
どうかまた一緒に

投稿者

福岡県

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