感情生活

バンド、と云ふと
叛社會的なものなのではないか
と勘繰る人もゐるだらう
だがあれも社會の一單位なのだ
私はその社會では
上手く自分を制御出來なかつた
どのバンドも感情のもつれで
失敗を呼び寄せてしまふのだつた
所謂主導権争ひである
そんな事が面倒臭くなり
やがてバンドの世界からは足拔けし
そのうちギターも彈けなくなつた
私の音樂は冥府に入つたのだ

戀愛も同じ道を
だいたいが辿つた
男女が主導権を獲り合つたつて
愛情が健やかに育まれる譯がない

何故、さうだつたのか
今更悩むべき事ぢやないが
何故、さうだつたのか
私は頭を抱へる

ならば詩は
私と云ふ狼一匹で
出來る事なのか
その點保留中なのだけれど
その單位が個人であることに
間違ひはないのであつて‐

だから私は戒めの為に
都市狼
と名乘つてゐる
マチ、都市に棲む
狼なのだ私は
と自分を規定し
私の書く詩は
細々ホソボソとだが續いてゐる
私は既に感情を自分の為だけに
使ふ

やうになつたのだ
そして詩を獄中の
手すさびとする、私は
監獄裏の感情生活者である

投稿者

埼玉県

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