とろいめらい
いくつもの残像からの、しばらくの瞑想の、分解される部分の、分別もなく死体もないままに、その金切声で金属の加工と言う〈とろいめらい〉の作業部会が今はじまろうとする。そこここに舞台の備品が投げ出されたままに、この役者の卵は金属の外装を持ち、この卵からは孵化する老人の顔を持ち、できれば不可能の断捨離で、君自身の卵に亀裂を入れようとする。いくつかのチューブで栄養を送られて、その分子構造に役満の匂いがする。それから眼を覚ましてからの筆順で〈天皇〉と書くのであろうか。それはまだ知られることのない、ボイスで君だけの手順で畑の隅の企てられる舞台の演出であるのだろうか。粗品を進呈するための〈あたたかな雨〉がもうすぐ降り始めるのであるから、そこには焼香の次第が書き加えられて、その演台には底辺の阿鼻叫喚の地獄絵が軽いタッチの水彩画で、背中いっぱいの刺青のように天下る白い鳥の姿で描かれている。自信はないのであるが、それでも演出された恒久平和のあの滑り出した一ページに、人は感激のシロクマの手から溢れた望郷レンズで、カタクチイワシの部分的解放労働と言うのであろう。そして今から仕切り直すこのベンジンの青い炎のラブアイスであれば、金属のこの左の手で、満月のこの誘惑のコンサートに仕掛けられた花火式の心象風景であるもの。それが君の〈とろいめらい〉だと少しだけでも言い出すのである。いともたやすく肝心のショートヘアーの焚き込められた死体の油からの朝露のような、左腕の痛みに少しばかり似ているものが、フナムシのようにすばらしく観客たちとともに今隠れて行った。さあここで〈とろいめらい〉の開幕、かいまく。
コメント
初めまして。
こんばんは。
以前からずっと思っていたのですが、
坂本達雄さんの詩は、
彼末宏の絵のようです。
イメージが拡散したり収束したり、
解るようで解らず
解らないようで解る
この「とろいめらい」は、
愛の告白だと思いました。
お見事です。
拝読できて嬉しいです。
ありがとうございました。
@サーラ
さんへ、感想をありがとうです。詩は本質的に〈世界への愛の告白〉であるのだと感じています。この世界への誕生を言葉の不可思議で〈祝辞〉とするものであるのでしょう。そのような場所から書き続けたいものです。