バランス
まどろみとまどろみとの間に
途切れ途切れの
世界が続いている
永遠なんてないって誰かが言ってた
せめてひとつながりの夢ならよかった
光が目にしみて
涙をぬぐう
辻褄を合わせるために
数滴の海水が
世界から失われた
バランス、すべてはバランス
左右に揺れている
いつも釣り合わないようだ
釣り合わせようとして
小瓶一本の気体を加えたら
よけいに傾いてしまう
語りかけられて
届かなかったぶんの言葉
聞き取れなかったぶんの言葉が
夢と夢との均衡を
少しずつ奪いとっていく
そうすると
振り子の機関は
ほんの少しだけ加速する
途切れ途切れなのと
ゆらゆら揺れ続けるのはとても似ている
右に揺れた時に始まる世界その①
左に揺れて始まる世界その②
もともと一本の線にはならないのだろう
だから、バランス
理屈ごとを並べて
バランスを取る
さみしい小鳥の独り言みたいだ
どこにも目的地はなくて
目の前にはただ振り子が下がってる
コメント
言葉のリフレインが気持ちいい詩に初めて出会えたかも。一・二行目でもう完璧。その言葉の行き来が振り子になってるんだなあ。
涙の量だけ海水が失われる… そうかもしれませんね。元はと言えば人間の体はほとんどが海水でできているのでしょうから。世界中の人の涙を集めて海に返したら… いかほどか海面が上昇するかもしれませんね。
バランスについて絶妙なバランスが語られていると感じます。
2連が好き。特に、バランス、すべてはバランス というのが好きです。
そして、最終連の余韻のバランスも 響きます。
好きな詩だなと。
シクシクと疼く下腹部の痛みのように、振れたり消えたりする存在感です。
@トノモトショウ さん
リフレイン気に入ってもらえましたか。
嬉しいです。
あっちこっちしてます。
@たかぼ さん
コメントありがとうございます。
そうですね、僕らの身体は9割が海でできていますね。足りなくなると海から補充したりして。
@こしごえ さん
2連目、好きって言ってもらえて嬉しいです。
バランスを保つのってすごく大変。
@サーラ さん
コメントありがとうございます。
世界情勢については頭が悪くてよくわからないですが、バランスが保たれすぎてもまた問題だったりするかもですね。
@たちばなまこと さん
好きな詩認定だ!わーい。
ほとんどの人が永遠はないよ、と言うけれど、たいがいの事象やこの僕の心象は永遠に続いてるのであって、途切れたとしてもまた違う時代の違う言語の違う大陸の誰かが同じように表現してくれるのだろうと一瞬思いましたよー
@三明十種 さん
ランボーも永遠を見つけたぞって書いてたし、少しずつ途切れながら続いていく人の営みは永遠と呼んでもいいのかもですねー。ぼくは永遠ある派です。
一連目から一気に引き込まれるように読みました。
バランス、陰陽。自然、宇宙。
それらはきっとひとつながりの夢。
そして独り言の鳥もきっとひとりじゃないのでしょう。
@あぶくも さん
そうですね、あっちへふらふらこっちへふらふらしつつも確かな何かとの繋がりは保たれている。そんな気もします。