冬のばら

 「おはよう!」
 小学校の正門前で挨拶する先生
 靴音が重なり合い波の様な
 さざめきを立てる中、彼の若い声は 
 翼になるヒレで潮風を切って飛ぶ
 冬のトビウオ

 正門近くの通学路沿いで
 民家の玄関先に置かれる
 バラの鉢植え
 いつまでたっても開かないのね
 と 通勤途中に思っていた
 昨日までの蕾は、花首を下に向けている

 幾重にも巻かれた花びらが
 うす茶色くなったなんて

 私の耳に子供達のお喋りは
 次第に小さくなってとらえきれず
 どこか 物憂く
 足取りにリズムの感じられないまま
 駅へ向かう

  ああ、それでも
  澄み渡る冬晴れの空なのに

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 冬の澄み切った空気をこの詩から感じます。
    通勤途中の すてきな風光ですね。

  2. 冬晴れの空の下でも晴れない心があるのかと思ったりして。若さを失ったのか、咲く季節を間違えたのか、それでも寒風の中で凛々しく咲く冬のばらがあったなら、それは素敵なことだと思いました。

  3. @こしごえ
    様へ
     いつもお読みいただいてコメントをお寄せくださり、とても励みになっています。
     本当に、どうもありがとうございます!
     この作品では第一連目を何度も書き直しました。情景の空気感を読みとってもらえ
     まして嬉しく思いました。

  4. @北野つづみ
    様へ
     いつもお読みくださいまして、どうもありがとうございます!
     ご感想のお言葉を戴きまして、あらためて「冬のばら」とタイトルをつけました作品に、向き合ってみました。
     私が、咲いてくれるものとばかり思っていた蕾でしたが……そうですね、そうなのかも
    しれません!バラを擬人化して見てみると、またちがったイメージが膨らんで描けそうな
    気もいたしました。^^ 私の感性の稚い一面に気付くことが出来ました。笑ヾ

  5. 最近のバラは冬にも頑張って咲こうとしてますよね。
    溌剌とした朝の雰囲気と作者の物憂い心象風景との対比が
    なんとも切ないです。
    「冬のトビウオ」いいな。。。

  6. @nonya
    様へ

     いつもどうもありがとうございます!ご感想のお言葉をお寄せいただきまして
    嬉しいです。(*^^*)
     「冬のトビウオ」を気に入ってもらえて良かったです。この言葉を使いたいと
    思った時、ちゃんとネットで検索しました。冬に旬を迎えるトビウオは、ハマ
    トビウオです。日本では房総半島以南の大平洋側を回遊していて、関東では「角トビ」
    や「春トビ」とも呼ばれているそうです。

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