残り香
ただ、青くて
細く収束する顎の形
幼い紙質の上に
設計図面を描くといつも
自動扉のところで
ふと途絶えてしまう
お昼の休憩中
遷都のようなものがあった
街のいたるところから
人はいなくなり
声のように漂っていた無数の
ミズクラゲたちも
姿を消した
すれ違う乗務員の背中に
蝉の欠片がしがみついている
それとよく似た光景は
わたしがいた居住地でも
見慣れたものの
悲しいひとつだった
時々、車窓に溺れている
わたしを見つけることがある
逃してあげたくて
窓を開けると
ほのかに潮の香りがする
かつてこのあたりにも
それなりに大きい
海があった
コメント
窓を開けると
ほのかに潮の香りがする
最終連が好きです。特にここが いいと感じます。最終連、タイトルとリンクしてますね。
^^