ヴォカリーズ、幼年期のための

かすかな気体が母音をまねて
つつましく
遠くの空をながめる子
瞳に映る季節、また季節
繰り返される慈しみ

陽射し
向こう側へ手をふる
帰れないと知っても
魂は旅をするかしら
平行線をたくさん引いて
けして交わらないかわりに
ずっと見つめあうような

色塗りに飽きては
パレットを放り
乾いていくとりどりの
うらめしい声をきく
小さな体は風に飛ばされそうなのに
もっと小さなものたちを守らなければならないなんて

ひぐらしの声がする
泣き止まない子を
泣きながらあやす子
安らぎはどこにあるかな
誰も知らない場所にあるかしら
つめたい板敷の木目を数える
天井と対の綾模様

遠いお空のずっとずっと奥に
秘密の船が係留されている
きっとどこへでもゆけるんだって
見えない歌い手がかぼそく笑った

投稿者

東京都

コメント

  1. どこか優しくて大切な悲しみをまとった詩だと感じます。
    2連が特に好き♪☆^^

    ひぐらしの声がする
    泣き止まない子を
    泣きながらあやす子

    あと、ひぐらしが好きなので、その辺を表した部分とあやす子たちの様子が合わさって切なく胸に迫ってきます。

  2. @こしごえ さん
    ひぐらし、いいですよね。ぼくも大好き。

  3. とても痛々しいのですが、詩に昇華されていて、こんな表現が出来るなら少しだけ体験してみたくなるような心地です。

  4. @たちばなまこと さん
    実話だからねー。体験するとぼくみたいな詩を書くようになるのかしら。
    ネグレクトで負った傷を詩で癒せるならいいなあ。

  5. 「平行線 けして交わらないかわりに ずっと見つめあう」が刺さりました。

  6. @たかぼ さん
    刺さりましたか。嬉しいです。
    わーい。

  7. 子どもたちのいくつかの映像がカットアップされて迫って来るようです。繊細で切なくて痛々しくて、でも切実で。

  8. @あぶくも さん
    コメントありがとうございます。
    記憶を辿る感じで書いてみました。
    実話を元にしている、ってやつです(笑)

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