風車

不思議なのは
この世でもっとも美しいものもまた
(この世でもっとも億劫なものと同じように)
何度も何度も繰り返すということだ

私達もまた何度も何度も繰り返している
風車のようにぐるぐると
その回転そのものの偉大さと同じだけ
私達の存在には価値がある

その回転が虚しいほどに
私達の存在は虚しいのだ

オランダには大きな風車があるという
一度も見たことがないけれど私の頭の中では
巨大な白い風車がオランダの丘の上で
何台か連なって回り続けている

フォーレが死ぬ少し前に書いたピアノ三重奏を聴くたびに
私自身の人生のことを思うのだ
どこにもたどり着くことのないまま
まるでもっとも美しいもののように
何度も何度も繰り返していることを

投稿者

埼玉県

コメント

  1. この詩は風車ですが、同じような感慨からかデュシャンの『自転車の車輪』が頭にパッと浮かんできました。1.2.3連の展開が見事ですね。

  2. コメントありがとうございます
    焚き火のように…

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