愛蝕体

あなたの肉体の為に、わたしの肉体が花開く。切り立った岩に立つ松の木が曲がりくねり、その蝕飲する意識下で下弦の月影であるもの。苦しみはかなりのジョットーの腕前で差し出す手に、時に角度に、わたしたちの隔たりが醸し出すジェスチャーで。いちどきに回りくどく再度には曇り空へと、上昇する。こすぐられる臍は出で立ちをミクロの介在に胡麻化すことも出来ずに、さらに奥まる地平の仰々しく落雷する。そのこしらえたみどりごの洗心のとがのたばかりの、思えらくいまはさしずめ枯淡であるとする。これはあなたの張りつめた肉体。そしてわたしの花開く肉体。あわよくばひさしよりこの詠嘆の爪立てて、ギリシア的睡眠の欲となしたまえ。けれども永遠がなだめて言うのであれば、その屍は薄白くけむりのような、はだえとなりぬ。あなたの肉体のまえで、わたしの肉体がはなひらく。うむこともなく砂洲からの水でもなく、ひだまりのたかまる心の邪門のおしひらき、このインサイダーの過熱された極感の到達するべき場所。ひとたびには語られぬコン。うまし指に岩だつ脱兎のごとく消しムラのいまだに残る愛蝕体。それではあなた、はなひらくわたし、肉体のうるしのような。

投稿者

岡山県

コメント

  1. 1行目で一気に引き込まれそのままラストまで行きました。

  2. 生ぬるい粘膜の心地よさが伝わってくるようでした。

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