葬列/下位次元展開

無限遠に目を細めれば
縮尺の都合上
ちいさな羽虫の亡骸も
ぼくのこの身体も
だいたい同じくらいの大きさです

土に還るための段階は
どうにも煩わしいから
いくつか端折ってみる
飛ばない虫を真似てみる

だんだん水分が抜けていって
何も感じなくなるんだろう

目を閉じると浮かんでくる
全てのものがほんとうだったらいいのに
自分を嘘つきと呼ぶのはちょっとした快楽だ

涼しげな風
弱まった太陽
死んでいく
みんな死んでいく
声を出さずに
おとなしく列にならぶ

葬列にところどころあいた余白

白夜の海をさびしく進む船みたいだ
一つところの記憶には残らないだろう
無人のまま漂流する船は
ときどきちいさな魚につつかれて
少しずつ浸水していく

無限遠に広がるこの世界を切りひらけば
彩雲の映える空のあたりと
ぼくの足元に転がる小さな死骸とが
繋がったりしないかなあ
それはただの白昼夢だから
すべてなかったことにしてしまいたいよ

なきがらの数をかぞえる
そのなかにぼくがいくつか含まれている
ひとつずつ埋めていく
鉱物質のかなしみはかなしみのままで
永遠なんてものがあるとしたら
きっと永遠にそのままで
ひとつずつ並んでいる

投稿者

東京都

コメント

  1. この詩は、悲しい悲しみじゃなくて、大切な悲しみに満ちているなあ、と感じます。
    この詩は、大切な悲しみの詩の中でも秀逸な大切な悲しみ加減を出していると思う。たもつさんもそうなんだけど、たもつさんの詩とあまねさんの詩は、(ちがって当然だけど)また異なる感じの大切な悲しみですね。
    大切な悲しみのある詩は大好きです。つまり、あまねさんのこの詩大好き♪☆^^

  2. @こしごえ さん
    大切な悲しみ。なるほど。そんなふうに考えたことがありませんでした。確かに悲しみにはいろいろな種類があるかもしれませんね。モーツァルトの悲しみは疾走するらしいしね。

  3. 仕事で使っている3Dソフトで、近づいたり離れたり360°角度を変えて見れたりするのですが、離れているパーツでも遠くで見るとくっついて見えるので、点だったものを面で捉えるし、世界は点の集まりで出来ているなぁと軽い気持ちで口にしてみています。

  4. @たちばなまこと
    点が線になり、面になり、立体になる。その次はどうなるんだろうね。そんなことを思いつつ書いた詩です。
    点も積もれば四次元、五次元の世界になるのかも。

  5. 何かすごいもの読んだぞ。今日一日、この詩をポケットに入れて過ごそう。

  6. @たけだたもつ さん
    ありがとうございます。ポケットをたたく度に増えます。

  7. @あまね
    増えた、、、

  8. 宇宙始まって以来の永遠の循環と幾重にも連なる層における完璧な生死の構造。それは葬列だったのですね、これは大作ですな。

  9. @あぶくも さん
    あわわ、大作ですか。恐縮です。
    生と死ってきっとミルフィーユみたいに互いに堆積していくものだと思っています。
    一切衆生悉有仏性。

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